株式会社も有限会社(特例有限会社)も共に法人であるので、個人事業の場合と違い、税制面での違いはありません。
つまり、同一の法人税率が適用され、同一の益金、損金の範囲が定められているので、有限会社(特例有限会社)が株式会社に商号変更(法律上は、組織変更ではなく商号変更という扱いになる)しても税金は変わないことになります。
これは、従来の有限会社に近い会社形態である合同会社(LLC)も同様です。(有限会社は新たに設立することはできません)
では、制度上の違いはどうかといいますと、下表の3点で有限会社(特例有限会社)のメリットともいえる違いがあります。(合同会社、合資会社、合名会社との比較はこちら)
株式会社 | 有限会社(特例有限会社) | |
取締役・監査役の任期 | 最長10年 | 任期なし |
決算公告の要否 | 必要 | 不要 |
登記の放置 | 12年経過後、職権でのみなし解散あり | 職権でのみなし解散はない |
有限会社(特例有限会社)には役員の任期というものがありません。
また、決算公告が義務付けられておらず、登記に関しても、役員の任期がないこともあり、放置していても強制解散の期限がありません。
逆に今度は、有限会社のデメリットについて見ていきたいと思います。
1.吸収合併の際の存続会社や吸収分割の際の承継会社になれない。
2.株式交換や株式移転が認められていないので、これらを活用した組織再編が出来ない。
3.株式会社に比べて、特別決議の要件が厳しいので、株主総会における柔軟な意思決定がしにくい。
4.機関設計の自由度が低いので、取締役会を設置して経営者の権限を強化したい等の要求を満たせない。
5.株式の譲渡制限が限定される。
有限会社は、株主間の株式の譲渡は自由になっていて、株主以外の人に譲渡をする場合にのみ株主総会の決議が必要で、これと異なる取り決めが出来ないことになっています。
したがって、株主間の譲渡についても譲渡制限をつけたい場合は、それを実現することが出来ません。
次に上記有限会社のデメリットにある項目以外の株式会社に変更するメリットです。
- 信用力の向上⇒大手企業との取引を望む場合や、コンペなどで受注を競う場合、取引先の選定が厳しい会社を相手にしている場合、優秀な人材を確保したい場合などには、株式会社に移行することにより信用力を向上させることができ、これらを有利にすることが可能になります。この点に関しては、新会社法になり資本金規制が撤廃されて、株式会社は一円からでも設立が可能になったのに対して、有限会社は資本金が300万円なければ設立が出来なかったことを考慮すると、株式会社の方が信用力があるとは言えないのではないか、というご意見があるかもしれません。
しかし、一般的に株式会社の方が有限会社よりも格が上という捉え方をされることが多く、取引社会においてもそのようなイメージが先行して重視されている現状があります。
また、今後は有限会社を設立することはできないことと、商号変更をして株式会社に移行することができることから、除々に有限会社の数は減っていき、「有限会社は古い会社」というイメージが出来上がってくるかもしれませんし、逆に、新会社法の規制緩和を上手く採り入れて、株式会社に商号変更をして生まれ変わったとすれば、取引先から、新しい制度も積極的に採り入れる上昇志向の会社という良いイメージを持ってもらえるかもしれません。
対外的な信用力が重要な経営環境にある有限会社(特例有限会社)であれば、早期に株式会社への移行の検討をすべきだと考えます。
- 会計参与を設置することにより資金調達がし易くなる⇒会計参与は、取締役と共に計算書類を作成し、その計算書類に会社の役員として会社法上の責任を負うので、外部の税理士や会計士が作成した計算書類よりも信用が置けると考えられ、金融機関からの融資を受ける際に、会計参与を設置していない会社に比べ、有利になるケースがあります。有限会社では、会計参与を設置することはできませんので、資金調達の選択肢が少なくなります。
以上のことから、会社を大きくする予定がないので、公告や登記が不要というメリットを享受し続けたいということであれば有限会社(特例有限会社)を継続し、組織再編を視野に入れる場合、総会の特別決議による柔軟な意思決定を望む場合、株主間の譲渡制限をつけたい場合や、信用力をさらに向上させて、有力な取引先の開拓や人材採用力の強化、資金調達力の強化などを図ろうとする場合には株式会社へ移行することをお勧めいたします。
◎有限会社から株式会社への変更は、楽々のおまかせサービス又はお得な書類作成サービスがあります。